2017年3月31日

イギリスはなぜEU離脱したいのか?わかりやすい解説と日本への影響

3月29日、イギリスEU離脱を正式に通告しました。

EU加盟国が「自国憲法の要求に従って自由意志で撤退することを認める」というEU基本条約「リスボン条約」から、ベルギー・ブリュッセルのEU本部に離脱を通告しました。

今後、イギリスとEU本部、加盟国の間で、EU離脱に関しての議論と交渉など、長期に渡る激しい駆け引きが行われることが報じられています。

イギリスはなぜEU離脱したかったのか?

日本への影響は?

欧州を巻き込んだ皮肉屋による激動のニュースを読み解いていきます。

イギリスはなぜEU離脱したいのか?

欧州各国の貿易・経済にわたる共同体であり、「貿易同盟」といった側面を持つ欧州連合・EU加盟国。

巨大なアメリカ経済への対抗路線としても機能していた欧州連合・EUでしたが、なぜイギリスは、経済的なメリットがあるはずのEUを離脱したいのでしょうか?

そこには、イギリス国民のEU経済に対する不信感と、イギリス国内への移民流入に対する国民感情がありました。

EU加盟国が抱える「難民受け入れ」の問題

イギリス国民を「EU離脱」へ強く突き動かした要因の1つとして、「移民問題」が挙げられています。

欧州連合・EUが掲げる規約のなかに、欧州連合の存在価値についてを謳った項目があります。

「連合は人間の尊厳に対する敬意、自由、民主主義、平等、法の支配、マイノリティに属する権利を含む人権の尊重という価値観に基づいて設置されている。これらの価値観は多元的共存、無差別、寛容、正義、結束、女性と男性との間での平等が普及する社会において、加盟国に共通するものである。」

(引用・出典:Wikipedia「欧州連合」欧州連合条約第2条より – https://goo.gl/VNPtVB)

社会保障が充実していることで知られるイギリスは、現在から50年以上も前の1945年、アトリー内閣による改革で、医療費の無料化・雇用保険・救貧制度・公営住宅といった「福祉国家」としての礎を築き上げました。

2010年に、日本でも導入され、2017年の現在も福祉政策の1つとして議論されている「子ども手当」も、イギリスを手本として考案されるほどの「社会福祉のパイオニア」と言える充実振りです。

近年では、イギリス経済の縮小や不況対策とあわせて「福祉国家」の水準を保ちつつも、方針の転換を図っていたイギリスですが、そこに振って沸いたかのように現れた問題が「イギリスへ流入する移民に対しての福祉制度」でした。

イギリスでは、移民であっても適切な手続きをとることで福祉手当が配給され、無料で医療施設を利用できるなど、移民に対しても、その充実した社会福祉が適用されるため、その経済的な負担を担うイギリス国民の不満が高まっていったのです。

手厚い社会保障と難民による税負担

かつては「福祉国家」として、日本を始めとした諸外国の福祉制度、社会保障におけるモデルケースにもなっていたイギリスですが、21世紀初頭にはその社会制度を支える経済基盤が弱まってきたことで、「社会福祉の水準を保ちつつ、経済政策とあわせた方針転換」を図ることが余儀なくされました。

自国経済が苦しい状況に立たされている中、「充実した社会福祉が受けられる」という理由で流入する移民が後を絶えません。

イギリスに流入した移民たちの衣・食・住は、イギリスの社会制度によって保障されますが、その税負担を担うのはイギリス自国民です。

増え続ける難民に対して、イギリスは本来ならば経済政策に回したいはずの税予算を、(移民のために)社会福祉へと回さざるを得なくなります。

一方で、イギリスに流入して、イギリスの社会福祉制度を利用する移民も、イギリス国内で職を持って働き始めます。

24歳以下の失業率が、25歳以上の層のおよそ4倍にもなるイギリスでは、自国財政と同じく、仕事が有り余って人員需要が上回る社会状況ではありません。

イギリス自国民と、新たに流入してきた移民で、少ないパイを奪い合う状況が出来上がり、イギリス国民の反移民感情は高まっていきました。

イギリスがEUを離脱する主な理由

  • イギリス国民の税負担増加
  • 失業不安の増加
  • イギリス固有文化の喪失
  • 治安の悪化

こうして、EU加盟による移民流入問題が、イギリス国内における税負担、失業不安の増加と雇用の奪い合い、イギリス固有文化の喪失、治安の悪化、といった国民感情を揺るがす問題として発展していきました。

2016年6月23日に実施された「イギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票」では、イギリスおよびジブラルタルの有権者による投票で、わずか4%の僅差で「EU離脱派」が勝利します。

イギリスのEU離脱による影響は?

EU加盟国から見ると暴挙にも近いイギリスのEU離脱でしたが、この「イギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票」以降に、意外な形での経済反応を見せています。

「イギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票」以降、一度は暴落の道筋をたどったイギリス通貨「ポンド」でしたが、急激なポンド安を受けて、英国への観光客が増加する見込みが立ち、「観光客の増加はバーバリーのような英国の会社にも恩恵をもたらす」という予測がなされました。

こうした反動を受けてか、2016年6月29日にはバーバリーの株価は約6%上昇。

自国イギリスのEU脱退で、移民問題が解決に向かうことによる楽観的な見方もあってか、2016年7月の失業者数は前月に比べて約8600人ほど減少しています。

しかし、イギリス国民にとっても、EU加盟国にとっても、今回のEU離脱劇は、楽観的な側面ばかりではありません。

ロンドンが「欧州マーケットの中枢」としての機能を失う

これまで、「欧州連合・EU加盟国である」という経済的な信頼性のもとに成り立っていたロンドン市場は、今回のEU離脱を受けて「欧州マーケットの中枢」としての機能を失うことになるだろうと予想されています。

これまで、資本主義世界の中心となる3つの市場としては、ウォール街を抱えるアメリカ・ニューヨーク、経済的な興隆著しい中国・上海につづいて、イギリス・ロンドンの名が上げられました。

近隣各国の金融機関がこぞって拠点を置き、世界経済を動かす取引が絶え間なく飛び交っている3つの世界的なマーケット。

特に「欧州連合・EU加盟国」であるイギリス・ロンドンは、ロンドンに拠点を置くことで、EU加盟国27カ国で、認可を求められることなく自由にヨーロッパ展開ができる、という大きな強みがあったことで知られています。

しかし、今回のイギリスのEU離脱によって、「ロンドンに企業・金融拠点を置いても、ヨーロッパ展開が狙えない」ということになり、かつてロンドンに拠点を置いていた金融機関や企業は、ドイツ・フランスに移転するだろうと言われています。

こうして、ヨーロッパ進出企業の中心地であったロンドンが、「欧州マーケットの中枢」として地位から崩れ落ちることが予想されています。

マーケットの信用が弱くなり、イギリス通貨・ポンドが下落する

イギリス・ロンドンが「欧州マーケットの中枢」の座から陥落すると、イギリス市場と経済への信用性がさらに低下していき「イギリス通貨・ポンドの暴落」が始まります。

すでに、イギリスが「イギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票」を実施した直後には、ポンド通貨の暴落が発生しており、このままいくと「ロンドンからの金融・企業の移転」「ポンドの暴落」はすぐに実現する可能性の高い未来であることがわかります。

元来、大航海時代から続く海洋貿易を中心に栄えたイギリスや北欧貿易国家のEU加盟国では、「ユーロ」という共通通貨に対しての否定的な見方があったとも言われ、デンマークやスウェーデンなどでもユーロとは異なる自国通貨を信頼する向きがありました。

イギリスでも、EU離脱によって、ヨーロッパ経済とその向こうにある世界市場に対して、「ポンド通貨」で戦っていくことになるのですが、この「暴落的なポンド安」がイギリスの追い風となるか、向かい風となるかは、賛否両論の議論がなされています。

今日における充実した社会福祉制度を築き、「ゆりかごから墓場まで」というキャッチコピーを生んだサッチャー政権に見られる経済政策では、計画的な「ポンド高」が輸出産業に深刻な打撃を与え、貧富の差が拡大するなど、当初意図していた狙いとは裏腹の大失敗に終わっているイギリス

EU離脱による「ポンド安」は、果たしてイギリスの思惑通りに機能するのでしょうか?

ポンドが弱くなることで、イギリスの輸入購買力が落ちる

ポンドが弱くなることにより、イギリスの輸入購買力が大きく落ちることが予想されています。

日本貿易振興機構の調査によると、1983年以降には赤字を続けているイギリスの貿易収支は、2016年第3四半期に386億9,200万ポンドの赤字を記録する「輸入偏重国」でもあります。

輸出においては、金や原油・石油製品のほか、自動車製品などの商品が挙げられるイギリスでは、ポンド安によってドイツからの高級車輸入が縮小した状態になることで、国内自動車産業が恩恵を受ける可能性があります。

反面、輸入が縮小するとは言っても、食料品などの輸入必需品については、安くなってしまったポンドを消費して買い入れることになるため、同じEU加盟国であるドイツ・オランダからの製品・食料品の輸入が縮小するということは、かつての「ブルジョワジー」と言われるような豊かな生活に陰りを与える結果となる可能性も秘めています。

ポンドが弱くなることで、国外輸出が増え、観光客が増える?

イギリスの航空会社「ブリティッシュ・エアウェイ」のオーナーであるインターナショナル・エアラインズ・グループが発表した予測によると、「ポンドが安くなることで、イギリスへの観光者が増加するだろう」という見込みが立てられています。

こうした観光客の増加によって、バーバリーのような英国ブランド企業が恩恵を受けるという考えのもと、「ポンド安を利用した爆買い需要」という楽観的な見方があります。

同様に、「ポンド安になるのであれば、輸出は増加するのではないか?」という点が指摘されていますが、ポンド安によるイギリスの輸出増には、「EU加盟国間の関税免除」という大きな壁が立ちふさがります。

これまでEU加盟国間では、「EU圏内での輸出であれば、関税は掛からない」という大きなメリットがあり、これがEU経済における貿易を加速させる大きな要因の1つになっていました。

しかし、EUを離脱した後のイギリスには、この「EU加盟国間の関税免除」が適用されません。

当然、イギリスからの輸出に対しては重い関税が掛かることになり、また同時に、イギリスへの輸出は関税が掛かってしまうので敬遠される、といった事態が容易に想像できます。

イギリスの購買力が落ちることで、他国はイギリスに製品が売れなくなる

ポンド安によるイギリスの輸入縮小は、イギリス国民にだけ影響する問題には留まりません。

これまで、多くの高級車をイギリスに輸出していたドイツをはじめ、EU加盟国では「イギリスにモノが売れなくなる」という事態にも発展することになります。

結果的に、EU全体の景気が悪化する

かくして、国民感情の高ぶりから始まったイギリスのEU離脱問題は、EU加盟国全体に対して損失を与えかねない事態にまで発展する可能性を秘めています。

「イギリスはEU加盟国からモノが買えない」「EU加盟国はイギリスにモノを売れない」という地獄絵図が描かれれば、未来の教科書に「ヨーロッパ全体を巻き込む歴史的な大失策」として記録されるような失態を演じることにもなりかねません。

これまでに、ヨーロッパ中央銀行のドラギ総裁を初めとした各国首脳が「EU残留」を求める要請と見解を述べています。

対するイギリス・メイ首相は29日に、イギリスがEU離脱を通達したことについて下記のように述べました。

「これからの数カ月、私は全イギリス国民の代表として交渉の席につきます。我々は誇り高き歴史と明るい未来を持つ国民と複数の国家から成る1つの偉大な連合国です。EUからの離脱が決まった今、団結する時が来ました」

(引用・出典:ハフィントン・ポスト 3月29日記事 イギリス・メイ首相インタビュー部分より抜粋 – https://goo.gl/VjRzHF)

かつての海洋国家・大英帝国の高潔な威厳は、EUの離脱を経てどこに向かうのでしょうか?

日本への影響

現在、イギリスに進出している日本企業の数は900社以上と言われており、日本の対イギリス直接投資の額は1兆7000億円にも上ります。

直接投資の総額で見ると、アメリカに次ぐ世界第2位。

ロンドンがヨーロッパマーケットの中枢から陥落すれば、イギリスに進出する日本企業は直接的な大打撃を受けることとなり、また、投資額から見ても、イギリス経済が破綻するような事態に陥れば、日本経済にとって大きなダメージとなることがわかります。

こうした悲観的な見方が現実のものとなった場合、間接的に「イギリスの弱体化」によって、EU・ヨーロッパ各国に影響が波及していき、結果的に、「ポンド安・ユーロ安による対日本貿易の縮小」によって、日本の貿易産業にも多大な影響を及ぼすことになります。

歴史的には、イギリス東インド会社の時代から、阿片戦争のように貿易・経済的な背景によってアジア各国への大打撃を及ぼすことのある悪名高い大英帝国。

諸外国からは大ブーイングを受け続ける今回のEU離脱は、これまでの歴史と同じく大失敗に終わり、日本へも大打撃を与えることになってしまうのでしょうか。

Twitterの反応

海外の反応

Paul Cockram「馬鹿馬鹿しい!ユーロに36億も注ぎ込んだ資金を返してくれよ!ほんとうにイカれた冗談だよまったく!」

Dino Alberini「実際のところ、もはやイギリスなんかに触りたがるようなヤツはいないよ。それで?いつ離脱するんだい?」

Simon Raymont「”イギリスを罰しろ!”という機運は非常に危険なものだ。すでにEUは情熱的な憎悪のなかにある。もし彼らが戦略を変更するようなら手痛い火傷を負うだろう。」

Bowerick Wowbagger「イギリスめ、馬鹿げた冗談だ。」

Edward Menmuir「このニュースチャンネル、”小さな小さなイングランドTV”に改名したほうがいいよ。」

kenny Smith「イギリスは自らを罰するようなものだ。」

kenny Smith「グッドバーイ、ヨーロッパ! ハロー、プーチン!」

numbersix100「イギリスのドイツ製品輸入を禁止しろ!ヤツらは90万台のドイツ高級車を輸入している!ユーロに支配される幸せな時間はすぐに終わりを迎えるぞ!」

federico pisani「イギリスへの輸出を禁止するだって?君の主張は大きな失敗の可能性を秘めてるよ。君みたいなヤツは、君自身のそのプロパガンダを一人で信じてなよ。」

Benito Sterlini「ちょっと落ち着けよ!単なるちょっとしたドラマさ。イギリスはEUを抜ける、EUとイギリスの議論は続いているけど、まだお互いを焼け野原にはしていない。大きな渦のような騒動はこれでいつか過ぎ去るさ。」

(引用・出典:Youtubeコメント欄より翻訳 – https://www.youtube.com)

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