2017年6月12日

天才・藤井聡太の棋跡|羽生善治以来の「伝説」の秘密、藤井聡太はなぜ強いのか?

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6月10日(土)、将棋・藤井聡太四段がデビュー戦から25連勝を達成し、歴代1位の神谷広志八段(28連勝)に迫りました。

若干14歳という若さでプロ棋士としてのデビューを果たし、以来デビュー戦から25連勝。

非公式戦ではあるものの、AbemaTV主催の7番勝負にてあの最強棋士・羽生善治をも破ったまごう事なき次世代の超新星・藤井聡太四段。

天才・藤井聡太なぜ強いのか?その強さの秘密に迫ります。

最新追記:6月26日(月)に行われた増田四段との対局を制し、藤井聡太四段が新記録となる29連勝を樹立しました!

羽生世代を超えて現れた天才・藤井聡太

1996年2月14日、将棋界の7つの頂点ともなる「7大タイトル」を全て独占し、そのあまりの強さから、そのうち「名人」「王位」「王座」「棋王」「棋聖」「王将」と、最高タイトルとも言われる「竜王」を除く6タイトルで永世称号を得た1人の天才がいました。

現・三冠の羽生善治。

デビュー1年目の1986年度には、破竹の勢いで40勝を挙げて全棋士中1位の勝率を記録し、2年後の1988年には当時の名人経験者4人を打ち破って対局数・勝利数・勝率・連勝の4つでトップの記録を樹立。

将棋界のタイトルが7つとなった1975年度以降、1度も成し遂げられていなかった「7冠」を制覇し、以降20年以上に渡って将棋界の覇王として名を轟かせている男は、「羽生世代」として将棋の歴史に深く名を刻んでいます。

その「羽生世代」から20年後、誰も打ち勝つことのできないほどの強さを誇った覇王の時代を経た2016年に、新たな新世代の天才が現れます。

全盛期からすると保持タイトルの数も減っていささか衰えたとは言われるものの、かつて「7冠」を達成して将棋界に君臨した男を倒した少年――――。

「性能の良いマシンが参戦する、と聞いてフェラーリやベンツを想像したらジェット機が来た」
(引用・出典:フジテレビ「バイキング」取材 – 高野秀行・六段コメントより)

そう評されて破竹の連勝を続けている新たな天才、それが若干14歳の史上最年少プロ棋士・藤井聡太少年です。

かつての覇王と同じく、中学生でプロ棋士デビューを果たした次世代の天才は、デビュー戦以来25連勝を挙げて、将棋界の古強者たちに立ち向かいます。

かつて、そのあまりの強さに「羽生善治以降の棋士が育たない」とさえ言われていた将棋界ですが、天才・羽生善治を凌ぐ新たな才能が現れたことにより、にわかに盛り上がりを見せ始めています。

囲碁、チェスと時を同じくして、AIと人間が争う時代に現れた若き才能。

果たして、藤井聡太少年は、AIの侵略から将棋界を導く救世主となり得るのでしょうか?

デビュー戦から25連勝記録を更新中

藤井聡太四段のニュースとして巷を賑わせているのが「デビュー以来の連勝」に関する内容のものです。

2016年12月24日、第30期竜王戦・6組ランキング戦の初戦、加藤一二三との対局がそのデビュー戦。

初の公式戦における対戦相手となった加藤一二三・九段は、現役プロ棋士の最年長棋士でもあり、藤井四段に先駆けること62年前に14歳7ヶ月で「史上初の中学生棋士」となった大先輩、数々の伝説を持つ名人経験者です。

この史上最年少の天才棋士のデビュー戦となった象徴的な対局は、「現役の最年少」と「現役の最年長」の対局でもあり、また、「神武以来の天才(じんむこのかたのてんさい=歴史が始まって以来の天才)」と呼ばれた「世代を隔てた天才」同士の対局となりました。

記録に残っている将棋の対局のなかでは、最も年齢差のある1局となったこの対戦において、110手で加藤一二三・九段を破った藤井聡太四段は、この象徴的な対局を皮切りに破竹の25連勝を遂げて歴代棋士第2位の記録にまで迫っていくこととなります。

藤井聡太四段|デビュー以降の対戦成績

連勝 対局日 棋戦 対局相手 棋戦
1 2016年12月24日 第30期竜王戦 6組(1回戦) 加藤一二三 九段 プロ公式戦初対局初勝利
2 2017年1月26日 第43期棋王戦 予選(2回戦) 豊川孝弘 七段
3 2017年2月9日 第30期竜王戦 6組(2回戦) 浦野真彦 八段
4 2017年2月23日 第67回NHK杯 予選(1回戦) 浦野真彦 八段
5 同日 同上(2回戦) 北浜健介 八段
6 同日 同上(決勝) 竹内雄悟 四段
7 2017年3月1日 第67期王将戦 1次予選(1回戦) 有森浩三 七段
8 2017年3月10日 第48期新人王戦(2回戦) 大橋貴洸 四段
9 2017年3月16日 第30期竜王戦 6組(3回戦) 所司和晴 七段
10 2017年3月23日 第43期棋王戦 予選(3回戦) 大橋貴洸 四段
11 2017年4月4日 第67期王将戦 1次予選(2回戦) 小林裕士 七段 新人としての連勝記録を更新
12 2017年4月13日 第30期竜王戦 6組(4回戦) 星野良生 四段
13 2017年4月17日 第67回NHK杯 (1回戦) 千田翔太 六段 放送日 2017年5月14日
14 2017年4月26日 第43期棋王戦 予選(4回戦) 平藤真吾 七段
15 2017年5月1日 第30期竜王戦 6組(準決勝) 金井恒太 六段
16 2017年5月3日 第48期新人王戦 (3回戦) 横山大樹 アマ
17 2017年5月12日 第67期王将戦 1次予選(3回戦) 西川和宏 六段
18 2017年5月18日 第7期加古川青流戦 2回戦 竹内雄悟 四段
19 2017年5月25日 第30期竜王戦 6組(決勝) 近藤誠也 五段
2017年6月2日 第43期棋王戦 予選(決勝) 澤田真吾 六段 61手で千日手成立
20 同日 同上 澤田真吾 六段 千日手による指し直し局
21 2017年6月7日 第2回 上州YAMADAチャレンジ杯(1回戦) 都成竜馬 四段
22 同日 同上(2回戦) 阪口悟 五段
23 同日 同上(3回戦) 宮本広志 五段
24 2017年6月10日 第3期叡王戦 予選(1回戦) 梶浦宏孝 四段
25 同日 同上(2回戦) 都成竜馬 四段

非公式戦「AbemaTV主催・7番勝負」での対戦成績

今年3月から行われたAbemaTV主催の非公式戦「藤井聡太四段 炎の七番勝負」のなかでは、勢いに乗る新進気鋭の棋士4人、そしてトップクラスの古豪3人からなる7番勝負を繰り広げています。

第2戦・永瀬拓矢 六段との対戦で1敗を喫してしまったものの、あの羽生善治を含む超一流のプロ棋士に6勝を挙げるなど、その実力が確かなものであることを知らしめました。

日本将棋連盟の取材記事によると、対局後には「6勝1敗かぁ・・・強すぎるな」という声が漏れるなど、早くも「次の将棋界に君臨する天才」の器を見せ付ける結果となっています。

勝敗 対局日 対局相手
勝利 2017年3月12日 第1局 VS増田康宏四段戦 増田康宏 四段
114手で投了 2017年3月19日 第2局 VS永瀬拓矢六段戦 永瀬拓矢 六段
勝利 2017年3月26日 第3局 VS斎藤慎太郎六段(現七段)戦 斎藤慎太郎 六段(現七段)
勝利 2017年4月2日 第4局 VS中村太地六段戦 中村太地 六段
勝利 2017年4月9日 第5局 VS深浦康市九段戦 深浦康市 九段
勝利 2017年4月16日 第6局 VS佐藤康光九段戦 佐藤康光 九段
勝利 2017年4月23日 第7局 VS羽生善治三冠戦 羽生善治 三冠
羽生三冠にも勝って6勝1敗。AbemaTV『藤井聡太四段 炎の七番勝負』第7局収録舞台裏(藤井四段コメントあり)|将棋コラム|日本将棋連盟
デビューからの公式戦連勝記録を更新中の藤井聡太四段。その記録は将棋界のみならず、一般メディアでも取り上げられていることからも、注目度の
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(記事引用:日本将棋連盟2017年04月25日付記事、AbemaTV「藤井聡太四段 炎の七番勝負」※動画あり)

なぜ藤井聡太四段は強いのか?

若干14歳の天才とも言われる藤井聡太四段ですが、並み居る古参の強豪を持ってしても「強すぎる」と言わしめるその強さの秘密はどこにあるのでしょうか?

実は、将棋・囲碁・チェスといったテーブルゲームの世界は、戦術・戦略・戦法や指し手など、「豊富な経験」と「膨大な知識量」が概ねの勝負を左右するとも言われており、それゆえに加藤一二三・九段のような「老齢に差し掛かった古強者」こそが強さを発揮するスポーツである、と言われています。

もちろん、時には1日となく日をまたいで行われる長い長い対局時間のなか、常人では考えられないほどの集中力・思考力を要求されるため、必ずしも経験と知識に優れる年長者が強い、という単純な構図にはならないのですが、それでも、長い歴史の中で現在進行形で研ぎ澄まされる棋譜の研究において、「経験と知識の積み重ね」によるアドバンテージは大きいとされています。

しかしながら、そうした「経験の差」をいとも簡単に打ち破ってしまうのが、「天才」というものでもあります。

将棋の世界では、その棋士ごとにある「戦術のクセ」「指し方の傾向」「思考の読み方」などがあり、こうした棋士ごとの個性によって、いくつかある「定石」のなかに星の数ほどの「棋譜」が生まれていきます。

将棋界に長く身を置くプロですら「フェラーリやベンツではなく、ジェット機だ」と、性能が良いどころか規格外の実力である、と評している藤井聡太四段。

デビューから間もない現在では、藤井聡太四段の情報はあまりに少なく、「対・藤井聡太」の研究が行われていない「ノーマークの天才」という状態

その豊かな発想力独特とも言われる指し筋に、繊細な打ち筋で知られる名棋士も一目を置く確かな実力が相まって、名だたるプロ棋士たちも翻弄されている状態にあるのではないかと言われています。

かつての天才・羽生善治も、あまりの強さと大きすぎる存在感から「羽生を倒すための研究」ともいえる膨大な量の研究と対策がなされ、停滞していた将棋界をひっくり返すような新しい戦術や戦法を次々と生み出したと言われています。

当の羽生善治氏は、そうした「自分を研究し尽くした一手を、新たに生み出した一手で打ち破ること」に情熱を燃やしていたと言われており、今後、「藤井聡太を倒すための研究」が成されるようになってからが、天才・藤井聡太の真価が問われることになるのかもしれません。

棋士・藤井聡太14歳の人物像

彗星の如く現れた天才棋士・藤井聡太 四段も、ひとたび対局を離れれば、まだ中学生のあどけない笑顔を見せてくれる・・・と言いたいところですが、実は、将棋の外においても「本当は14歳ではないのでは?」と思わせるような圧巻の人物像を見せてくれます。

対局後のコメントも14歳とは思えない…

「自分の実力からすると、僥倖としか思えない」
(藤井聡太四段 対局後の感想コメントより)

「僥倖(ぎょうこう)」・・・思いがけず幸いを得ること。偶然に得る幸運。

わずか14年間の人生で「僥倖(ぎょうこう)」という難解な単語を使って「大人ぶっている」などと言うことができない中学生というのは、世の中にごく限られるでしょう。

読書家であることが知られている藤井聡太四段は、羽生善治氏のベストセラー「羽生マジック」をはじめとした将棋関連の書籍を読み漁っていることが日本将棋連盟の取材のなかで明らかになっています。

過去の棋譜や定跡の研究はもちろんのこと、著名な将棋人が記した思考や考え方なども「本を読むこと」から得ており、幼少期の将棋ノートにはびっしり一面に細やかなメモや研究内容が記されていたと言われています。

こうしたエピソード1つ1つからも、「思考力のスポーツ」とも言われる将棋の世界で史上最年少のデビューを飾る少年は、やはり「並みの少年ではない」ことがよくわかります。

ヒカルの碁、3月のライオン…漫画も顔負けのリアルな天才が指した「ネット将棋」

かつて少年ジャンプで一世を風靡した囲碁マンガ「ヒカルの碁」。

室町時代の天才棋士が現代によみがえり、主人公のヒカルと共に「究極の一手」を探求する人間ドラマが話題を呼んだ少年漫画では、現代の利器でもある「インターネット」を利用した対局が描かれる場面がありました。

「ヒカルの碁」や「3月のライオン」と言った将棋・囲碁のマンガに負けず劣らずの活躍を成し遂げて、「少年漫画を地でいっている」とも言われる藤井聡太四段も、幼少期に「ネット将棋」の世界で大暴れをしていたことがわかっています。

既に「藤井君は将来の名人位になる人物なのではないか」と囁かれていた小学2年生のある日に始めた「ネット将棋」は、中学生になるまでの間に1500回を超える対局数をこなしており、インターネット・ネイティブ時代の天才とも言うべき活躍を見せています。

マイナビ出版による取材のなかで、ネット将棋を嗜む棋士は「ネットではみんな本名を出さないが、あまりにも強いので藤井君のハンドルネームはすぐに知れ渡った」と答えており、名人級の大暴れを見せていたことが伺えます。

先に紹介したマンガの作中では、「主人公であるヒカルにとりついた天才棋士の幽霊・藤原佐為が、その正体を隠す為にインターネットを通じて囲碁を打ち、あまりの強さに評判を聞きつけた現役プロ最強の棋士と対局する」という内容が展開されており、「中学生にも満たない少年が、勝負の世界に生きるオトナを翻弄する」というストーリーに全国の少年少女が胸を躍らせたものです。

そうしたマンガのストーリーをなぞらえるかのように、藤井聡太四段はインターネット上に知れ渡るほどの強さを発揮したその後、インターネットテレビの企画において現代最強棋士とも言える羽生善治三冠との対局を実現しており、まさに「事実は小説よりも奇なり」と言わんばかりのストーリーを歩んでいることになります。

天才の片鱗…将棋を始めた頃に描いた壮大な「迷路」

幼少期の藤井少年が、新聞広告の裏面に描いたと言われる「巨大な迷路」が話題を呼んでいます。

6月5日付けの日刊スポーツ社会面に、その全貌が掲載された「巨大迷路」。

極限の思考と集中力のなかで、膨大な発想を超えたその先に「次の一手」を探求する「将棋の天才少年」が描いたものが、壮大で複雑な「迷路」である、というのは中々考えさせられるものがあります。

天才を育てたと言われる積み木の立体パズル「キュボロ」

藤井少年がまだ幼い頃に遊んでいた積み木の立体パズル「キュボロ」。

「あの」天才・藤井少年が親しんでいた積み木のおもちゃ、という触れ込みで瞬く間に注文が殺到し、話題となりました。

日本唯一の自然科学の研究所とされている「理化学研究所」の発表によると、積木などの立体パズルは、立体・空間的な構造を理解するために使われる脳の「けつ前部」と呼ばれる部位を活性化することがわかっており、こうした幼少期の蓄積が、現在の天才少年を育んだ所以の1つなのかもしれません。

藤井聡太四段の快進撃はいつまで続く?

6月10日時点で現在25連勝を達成している藤井聡太四段。

デビューから25対局を終えた現在では、「打倒・藤井聡太」の研究が盛んに行われているといったニュースはまだ聞こえてきませんが、このまま竜王戦をはじめとする7大タイトルに手が掛かるにつれて「対・藤井聡太」の研究が進んでいくことは明らかです。

並み居る古強者達が、日々その牙を研ぎ澄ましている勝負の世界において、「藤井聡太、倒すべし」との潮流が生まれてからこそ、天才の本当の試練と深化がはじまるというもの。

今後の動向が見逃せません。

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